【縄文人の核DNA初解読 東アジア人と大きく特徴異なる】朝日新聞 神田明美 2016年9月1日19時28分
縄文時代に 日本列島 で狩猟採集生活をしていた縄文人の遺伝的特徴は、東アジアや東南アジアの人たちとは大きく離れていることがDNA解析でわかった。縄文人のルーツを考えるうえでの手がかりになりそうだ。総合研究大学院大学や国立科学博物館などのチームが、人類学の専門誌ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクスに1日発表する。
福島県北部の三貫地貝塚で出土した約3千年前の縄文人2人の歯から、細胞核のゲノム(全遺伝情報)解読を試みた。約30億個ある塩基のうち、約1億1500万個の解読に成功した。縄文人の核DNAの解読は初めて。
世界各地の現代人のDNAと比較したところ、中国南部の先住民や中国・北京の中国人、ベトナム人などは互いに近い関係にあるのに対し、縄文人はこれらの集団から大きく離れていた。
現生人類ホモ・サピエンスは、4万〜5万年前にアジア地域に到来し、その後、各系統に分かれたとされる。今回のDNA解読で、少なくとも1万5千年前よりも古い時期に縄文人につながる系統ができ、東アジアや東南アジアの集団は、別の系統の中から生まれたと考えられるという。
日本人では、遺伝的にはアイヌ人が最も縄文人と近い関係にあり、沖縄の琉球人、東京周辺の人と続いた。
頭骨と歯の特徴から現在の日本人は、縄文人と、弥生時代以降に大陸から渡ってきた渡来人が混血して形成されたと、されていた。チームの国立科学博物館の神沢秀明研究員は「日本人が、縄文人と弥生系渡来人の混血という説が、DNA解読でも裏付けられた」としている。

三貫地貝塚・出土した人骨
その違和感とは「日本人が、縄文人と弥生系渡来人の混血という説が、DNA解読でも裏付けられた」という文言である。端的に言えば『混血の時期』と『弥生系渡来人』という造語、つまり弥生人は渡来人と思わせる刷り込みである。
近年の弥生時代初期の人骨発掘による研究では、弥生時代における遺跡からの渡来系と判別される人骨の割合の少なさが指摘されている。渡来人のルートである九州でさえ、弥生時代の人骨は縄文的形質をもつ者がほとんどである。
「縄文の生活誌」講談社・岡村道雄氏によれば「つまり、『弥生人』と呼べる人が大陸側にいて、日本列島へ多数渡来したわけではなく、縄文人が水田稲作や食生活などの変化によって形質が変化して弥生時代の人、すなわち弥生人になった。結論的には、少数の渡来人はやってきたが、『弥生人』はどこからもやってこなかった」と述べている。
また、大陸の影響を過大視し、弥生時代に大陸から進んだ文化を持った人々が数多くやって来て、農業を主とする日本文化の礎を築いたという認識で、歴史をかたる愚を犯してきたような気がすると述べ、「ようやく近年になって、縄文文化の実像の解明が進み、縄文見直し論的な風潮のなかで、日本文化の基層は、自然と共生して生きてきた縄文文化に求められるという理解が進んできた」と書いている。
結論をいえば、弥生時代に日本人のDNAに変革をもたらせるほど、渡来人との混血はなかったと言うことである。
「縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く」神澤秀明(国立科学博物館)
read:http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/087/research/1.html
「二重構造説で指摘されていたことを、縄文人の核ゲノムを用いて直接的に証明した初めての成果である。」
この神澤秀明氏の誤りは、二重構造説の混血時期を弥生時代と思い込んでいるところだろう。当然ながら縄文人のDNA分析から、後の時代に生きる弥生人との混血までは解析できない。戦後の左翼歴史学の刷り込みを鵜呑みにしてきた医学又は理工学部出身の研究者と言ったところだろうか。
言うまでもなく、日本人のDNAの多様性の根源は、約1万5000年まえ以前に大陸と陸続きの時代に、多種多様な南北モンゴロイドが日本列島で合流したときだ。また近現代で日本人のDNAに変化をもたらした時期としては、推定で240万人もの朝鮮人が移住してきたともいわれる朝鮮併合時であり、朝鮮戦争の混乱期に彼らが何十万人も日本に密航してきた戦後であり、国際結婚が進んだ今日に他ならない。その事実をスッポリ抜かして二重構造説を唱えるのは愚の骨頂というものではないか。
少なくとも朝鮮人との二重構造説をうんぬんするのならば、その混血の時期は近現代であると結論すべきである。
DNAの研究に関しては、日本人固有ともいえるD系列のD2というハプログループの存在がある。この遺伝子は、チベットを除く近隣諸国(中国・朝鮮半島)にはほぼ存在しない。さらにはこれに含まれる「YAP+」(ヤップ)遺伝子の研究から、著書「DNAから見る日本人」の中で国立遺伝学研究所・斎藤成也教授は、弥生時代における二重構造説や人種置換説を明確に否定している。
神澤秀明氏はこれらの研究結果に対して、どう反論するのかぜひ明示して欲しいものだ。
とどのつまり、弥生・縄文「二重構造説」を縄文人の核ゲノムから証明したとする結論の導き方のいい加減さが分かるというものだが、この記事からプロパガンダ的造語、『渡来系弥生人』なるものが、日本人のルーツであるとの間違った認識を植え付け、約1万5千年もの長い歴史を持つ縄文文化(ひいては日本)を、それより歴史の浅い中華文明を始めとする大陸文化の下位に位置づけようとする意図を感じるのは、うがった見方なのだろうか。